兼業編集・ライターママ戦いの記録

ベンチャー企業で働きながらフリーで編集・ライターをやってる三十路女の日記。2018年長女誕生でマルチタスク極まれり。日々死にかけてます。

【読書感想文】学者のエッセイは時代を映す。遊学?なにそれ食べれるの?

年末年始のヒマな時間ができたので、ずっと気になっていた新書『バッタを倒しにアフリカへ』を購入した。

表紙を飾る緑色のコスプレ写真は、書店の棚でめっちゃ目立ってたので、本当は他の本を買おうと思っていたんだけど、思わずこっちも買っちゃった。

ああ、また凄い学者が出てきた。表紙でコスプレなんてずるいよ。
ものすごくバッタ愛にあふれた本なんだろうなあ。

という、私の予測はいい感じに裏切られたんですよ、奥さん。

 

一般的にこういう本は分かりやすい言葉でご本人の研究内容を面白く説明するものが多いのだけど、本書はどちらかというと冒険エッセイ的な味わい。

 

加えて、いちばん「すごい」と思ったところは、著者の前野博士が恵まれた研究者でも、選ばれし研究者でもなんでもなく、ポスドクで、定職を得るために一発逆転を狙ってアフリカに旅立ったってところ。

 

書籍の中に、金の話が出てくるわ、出てくるわ。

現地の協力スタッフに支払う謝礼(うまいことボッタくられる)、日本からスーツを送ってもらった場合の送料(現地で買う方が安かった)、日本学術振興会海外特別研究員としての2年任期の支援額(本当に2年海外で生活と研究できるの!?ってほど安い。そして倍率20倍)などなど。

 

なんだか、『若き数学者のアメリカ』とかと隔世の感がありすぎませんか。

ちょっと前まで学者さんのエッセイって、ご本人はエリートで、選抜されて海外にご遊学されて、ご実家も裕福でって感じの環境で、教養あふれた文化へのまなざしとか気の効いた描写が魅力、って本が多かった気がするんですが。

もう、最近の博士はそんな地平に立ってないってことですね。

まあ、天下の山中教授ですら研究のための金策に走り回ってるって話が聞こえてくるくらいだしなあ……。

 

というわけで、『バッタを倒しにアフリカへ』は、どちらかというと著名なウェブライターであるヨッピー氏の『明日クビになっても大丈夫!』とか、ノンフィクション作家・高野秀行氏の『幻獣ムベンベを追え』に近い味わい。

両方とも、ジャンルは違えど、「やりたいことをやるにはどうする?」って問いにご本人たちの類稀なる行動力で答えてる本でもあると思うんですよね。

 

いまの時代、誰もポンと金は出してくれないし、出してくれたとしても単価は下がってるし、出してくれるパイは少ないし……っていう環境で、やりたいことをやるには、何か行動して勝ち取っていかなきゃ話にならない訳で。

 

そういう意味で『バッタを倒しにアフリカへ』はものすごく現代的な本だし、やりたいことをやれていない人に対してはものすごく強力なエールだし(ここまでやってみろよ!的な意味で)、若い人には「やりたいことやるには、これくらいやんなきゃダメ!」って意味で参考になる本になるんじゃないかなあ、と思う。

 

私も頑張らなきゃなあ、と年明け早々ハッパをかけられた気分になる1冊でした。